読み初め。
- 作者: 高野悦子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/05
- メディア: 文庫
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帰りたい、と思ってしまう。特に年の境目、ふし目だったから。
懐かしく大切な書籍に戻っていけば、「おかえり」と云われずとも心は安まり、高まり、愛を感じ、呼吸が出来る。
旅に出よう
テントとシュラフの入ったザックをしょい
ポケットには一箱の煙草と笛をもち
旅に出よう
何故中学校1年生の学級文庫に、かなり読み込まれたこの本があったのだろうか。13歳の子どもたちに、担任の先生は読ませたかったのだろうか。ただ、私は、友だちが出来ずに孤独だった1学期の4月に『二十歳の原点』を読んだ。
帰りたい。何処へ。実家ではない。宇部ではない。京都ではない。記憶へ。
新しい本へ踏み出さない臆病者で、迎えてくれる読書に耽る。2日未明、湯船。帰りたい。帰りたい。帰る場所が欲しい。何処か帰る場所が欲しい。私の手帖でも、小説を書いている原稿用紙でも、MacBookでも、──最も必要とするのは、そこを〝帰り場所〟だと思う心持ちなのだ、と、平静にblogを書くと、それは、解るのだけれど。
2018年。帰りたい、と思う読書で明ける。帰る場所が無いんだ。それだけは高野悦子さんも、同じように思っていたのではないだろうか。
飲酒を控え(喫煙はしないので)ジンジャエールを立て続けにのんだ。この写真の翠の光はそれ。綺羅綺羅と──まったく、きみは硝子が好きだね──。
16歳の高校生の遠足、「いずみちゃんは20歳にならずに死にそう。永遠の少女だから。って、ピストルで、バァーン!」ひとりの友だちが云って、みんなわぁと笑ったので私もけらけら笑った。もう32歳にもなれましたよ。あの頃の子、ひとりは19で死んだよ。
中学1年、学級文庫を設置してくれた先生は、『二十歳の原点』やら何やらに並べて『ネズミくんのチョッキ』シリーズも書棚に置いていらっしゃった。まったくチャーミングな方なのだ。今は、中高の(一貫校なので)教頭先生になっていらっしゃる。「自分の担任クラスが持てないことがさびしいです」と年賀状だかメールだかに書いてくれていた。あのひとは私のお母さんだ。