薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

ニスの戯れ

 ニスにはただ透明にツヤを出すものだけではなく、木材の色をしていて木肌が綺麗に見映えするようなタイプがある。今日はそのニスのメープル色の壜に刷毛を浸して、ただひたすら白木のものを集めてきてはニス掛けを施して現実逃避をした。塗るのにめぼしいものが無くなった後は、スケッチブックの表紙、サランラップの芯、彫刻刀の柄、アイスクリームのスプンの木べら、などをどんどん塗った。床に敷いたビニルの上でぺたぺた塗った。
 刷毛は大きなものなので、同じ方向にざっくりと繰り返し塗ると、木目模様のような風合いが生まれて、楽しい。

 お仕事から帰ってきた家人Cさんに「血迷うにも血迷い方ってものがあるでしょう……」と大変あきれられた。「でも3度塗りくらいしないといけないからまだ置いておいてね」と私は答えた。「3度!?」「綺麗に塗るには重ね塗りなの」
「取り乱すにしても取り乱し方ってもんが……」と呟くCさんには悪いのだが、私の頭のなかでは(メープル色はちょっと弱いな……今度買うときはオークを選ぼうかな……)などとうわの空でふわふわした何かが舞っていた。思惑ふわふわの人間である。

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