薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

Cocco『ポロメリア』

   小学5年生から中学1年生くらいのときに読書をしている気分になった。最初は自意識過剰な主人公や、(もしかして“Raining”みたいな話になっちゃうのだろうか)と“Raining”は好きだけれどそれは嫌だなあと思って身構えたのだけれど、自由奔放でバレエに打込む女の子の物語は鮮やかだった。飾ることなく描かれた沖縄についての文章も良かった。

 この1冊の本のなかで、時間は1週間しか過ぎない。何気ない日々で、それでも小さな身体に記憶をいっぱい籠めている。子どもは、生きてきた時間が短い分、記憶の重さが違うのだと思った。

 里奈とさおりが長い坂を登って行く。その背中を見送りながら 私は初めて“さおり”と呼べたことに気がついていた。

 この一文で泣いた。級友を全然呼び捨てに出来なかった自分の個人的な思い入れが蘇った。そういう小さくて大きいことって、ある。そういう風に呼ばないと余所余所しくって友だちじゃないみたいに感じられるのに、みんなが使う呼び名を自分も使うことが出来なかった、かわいい友だちたち。謝ることでもないし嘆くことでもないし、それでも難しいことだった。

(本文、「私」と「わたし」の表記揺れの激しさは何なのだろう……)

   Coccoの『ポロメリア』という歌はとってもあたたかくて大好きな曲です。画像リンク先はAmazonのダウンロード。ポロメリアというのはプルメリアという花の名前のことだそうです。ハワイに多く咲いているのかな。本のなかでは主人公たちが小学生のとき、両親や祖母たちみんなでハワイに親戚を訪ねにゆく場面があります。