薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

霜月みつか「雨の日、テトラポッドで」

雨の日、テトラポッドで

雨の日、テトラポッドで

 物事がちゃんと起こってちゃんと収束する、というドラマのセオリィがきちんと嵌め込まれたピースワークの小説でした。お話とか物語ってそういうのが当たり前かも知れないけれど、読書すると実はそうではないことも多々ある。現実の人生がどっちなのかは知らないし判らないけれど、出来事が起きているのか起きていないのか判らないままになんだか飲み込まされる小説と、出来事が詰め合わせになっているコース料理の小説があるとして、この本は後者として巧かった。(実は私は前者の小説を読むことが多かったり、自作も前者であるように思っているのだけれど)ただ、読みながら、これってもっと良くなるし、巧いんだから本としてはもっと良くなって販売された方がいいぞ、と時々思った。折角アマゾネスで購入出来るわけですし。でもそれは編集をちょ〜っころびっとしている私のエゴイズムで、本質的にはどうでも良いことかも知れない(著者にも特に重要ではないかも知れないので、非礼だったらごめんなさい)プロット立てが巧いという点ばかりに比重を置くわけでもなくて、言葉の選び取り方もところどころ、著者にしか絶対に持てない光り方をしていて良かった。ポストイットの無い場所で読んだことを悔やんだ。国語の教科書だったら傍線である。なんというか、光の粒子が流れてくるようなときの表現が秀逸。もう一度読めば引用出来るのですが今はこう書くのみで。綺麗でした。

 69頁で「あ、新しい?」と思って、77頁で「あ、そういうことじゃなかった」と考え直したけれど、それは結末を話すみたいだから書かない。あと、貶すわけではないけれど一部分は、メンタルがアレなメルヘンな私が読むとちょっと刺激が強いくだりが少しありました。それはしかし私が悪い。

 あと、どうでも良いことですがテトラポッドって登録商標だから、NHKで発言するのに憚られる単語の類らしいですよ。NHKが屈服するまで頑張ってくださいっていう褒め方はどうでしょうか。

 霜月みつか氏はtwitter上でお名前を知って、最近Amazonから発売されているものをまとめて購入しました。でもまだあまり読めていなくて、3作品めです。最初に読んだのは『絶対移動中 vol.10 妄想×少女』で次は、伊藤鳥子氏から頂いた『ジョソウダンシ!!』でした。でも感想はどれも未だ書いていない。読めよそして書けよ。


 この合同誌にも同著者の作品が収録されているんだよ。でもこの合同誌は品切れなんだよ。品切れになるほど良い本である(泉由良さんも寄稿させて頂いているよ)

絶対移動中 vol.10 妄想×少女

絶対移動中 vol.10 妄想×少女

  • 作者: 青砥十,秋山真琴,有村行人,泉由良,伊藤鳥子,くりまる,踝祐吾,志方尊志,霜月みつか,高橋百三,三糸ひかり,密林社,蜜蜂いづる,OARFISH,kaz
  • 出版社/メーカー: 密林社
  • 発売日: 2011/11/03
  • メディア: 雑誌
  • クリック: 4回
  • この商品を含むブログ (4件) を見る

 『ジョソウダンシ!!』の方は、伊藤鳥子さんと霜月みつかさん、2篇収録されています。

残り9冊は冬コミに持って行きます 伊藤鳥子氏のtweetより

 とのこと。

 正直に告白すると、私は冬コミって何か知らないけれど(まあ調べれば良いのだけれど調べないのだけれど)、冬コミのなかでも9名さまでお終いなので走ると良いです。


 最後にリンクを。

 □ 霜月みつか氏web 1103号室。
 □ 伊藤鳥子氏はてなダイアリ id:torico
 □ 創作文芸見本誌会場 Happy Reading 内 『ジョソウダンシ!!』見本