薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

『イメージと意味の本』

イメージと意味の本   記号を読み解くトレーニングブック

イメージと意味の本 記号を読み解くトレーニングブック

 恩師と呼ぼうか恩人とお呼びすれば良いのか、美学者前田茂先生の翻訳された本です。まだ少ししか捲っていないのですが。

 内容を深く知らずに受け取ったため、眉間に皺を寄せて考え込みながら読まないといけない細かな文字だらけの本なのだろうと思っていたら図表が多くて入り易い本でした。しかし読み始めると矢張りいっぱい考えることがあって眉間に皺を寄せたりもしています。とても素敵な本を頂きまして、幸せであります。ありがとうございます。

 今の自分だけでは足りないのですが、以前の講義のルーズリーフも傍らに置いているので心強いです。


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 大学に入ったときの1回生は記号論の授業が必修で、それまでノートに書くものは数式とグラフが主だった筈なのに(急転直下の文転をしたので)自分は何を書いているんだろう、とその講義はノートを取りながらも時々よくわからない気分になりました。社会科の板書ならまだ解るのですが、AさんがBさんと話している際のコンテクストがどうだとか、言葉の機能はひとつではないとか、伝えたいこととイメージが一人一人の頭のなかでどうなっているのかとか、そういうものを図に書き込んでいるのはなんだか不思議で、傲慢に云うと書かなくても当たり前のことを書いているみたいで、しかし書かなくても当たり前なことを図解してノート書いてみよう、と思うとなかなか文章と図にはならないのです。解っているとか当たり前だと思っているのはとてもファジィでした。それをひとつひとつ講義として聴くのは楽しかったです。

 あとから見直すと、これも学習したら面白い分野だなあ、とつくづく思います。

 そのときのテキストは岩波新書記号論への招待」でした。

記号論への招待 (岩波新書)

記号論への招待 (岩波新書)

 毎週(隔週だったかも知れません)のレポートにはいつも頭を悩ませましたが、知識でも計算でも無いものを勉強するのは初めてだなあ、というような気持ちになって良いことに触れさせて貰えました。ちなみに2回生になったとき1回生への夏期課題か課題答案見本を作るように云われたような曖昧な記憶……。

 面白い本なので、この方面に興味のある方はどうぞ。宣伝しておきましょう。


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 巷に『前田の美学』という本がありますが、こちらは美学者前田茂先生のご本ではなく、広島東洋カープにいて昨年度で引退された前田さんの話の本なので、ここんとこ混乱してはいけないのですよ。

 1浪していきなりお正月に文転したので、大学では習いたかったことが習えない、と思って悲しかったこともありましたが(しかも卒業していない!)美学概論はとても楽しかったです。とても幸運でした。恩師とはいつまでもありがたいです。いつもいつも努力しなくてすみませんでした。本当にね、努力しなかった。今もしていない。酷い人間です。



 私は何を思ったか中学生の頃から、一生涯たったひとつの微分方程式のことを考えるのに費やしたいなどとずっと信じていて(早過ぎた中二病ってやつかしら!)やっぱりそれは数学的なセンスも無さを高校のときに数学の先生と一緒に問題を見ていたら自覚させられてきましたが、それにしても健康もメンタルもぐちゃぐちゃで受験のことも上手く考えられなくて、ふわっと文転したのは時々とても口惜しかった。でも、美学概論があったから、救われました。