薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

白倉由美「きみを守るためにぼくは夢をみる I 」

 白倉由美さんの本は凄く個人的で切ない思い出があるので、個人的な理由でだーんだん泣いてしまいました。「おおきくなれません」だった著者の「おとなになるために夢をみる」への変遷……。わたしもおおきくなりたい、というか、なってしまう。死なない限り年齢を重ねてしまう。おとな(正確に云うと一応おとなだけどよく転んだり間違えたり慌てたりする幼稚っぽいひと)になってゆく。それは、止められない。どうしてひとは人生の最初に、子ども時代を過ごさなければならないんだろう、とか、思った。

 しかし文庫化は嬉しいです。星海社文庫って初めて知りました。

きみを守るためにぼくは夢をみる

きみを守るためにぼくは夢をみる

 文庫版の装丁画は変わっていないように思えますが、単行本の装丁画よりもちょっと濃くて、夏の雲の色が美しい感じがします。印刷の具合なのかしら。文章も加筆訂正されているけれど、どの部分かはっきりとは分からなかった。でも何故か単行本版よりも気持ちの良い読後感だった。単なる自分のコンディションである説とか。

 この本を、著者は「児童文学」としている。図書館で借りたときも児童文学の棚にあった。わたしが例えば10歳(主人公の朔くんとおない年だ)のときに読んだら、どう感じていただろう。それを考えついて当時の感覚が思い出せない自分が哀しい。かなしいかなしい。

「じゃあ、どうやったら、どんなふうにふるまえたら、大人になりたいと思えるの? わたしは人と話すことがあんまり得意じゃないし、なにもうまくできない」
 砂緒ちゃんはアイスキャンディーの棒を、つま先でそっと土に埋めた。まるでこころを埋めてしまうように。
 ぼくはそのことについて考えた。そして、ぽつりとつぶやいた。
「……夢をみることかな。」
「夢?」
「どう、一年後の自分、そのあとの自分。なりたい自分の姿の夢を、ぼくはみるんだ。」



 微々たる難癖、文句。星海社文庫の本、栞紐があるのは素敵なのだけれど、その紐(リボンみたいな)のが、なんだかすっごいチープで……頑張れ!!