薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

ランゲルハンス島の午後 (新潮文庫)

ランゲルハンス島の午後 (新潮文庫)

(前略)都市の真ん中で息をひきとった人々はどのような道筋を辿って死者の国へと向かうのだろう? 彼らはビルの影をそっとつたい、地下鉄軌道の闇にまぎれ、あるいは雨水とともに下水道にもぐって、音もなく都市を横切っていくのだろうか? 僕にはよくわからない。しかし僕は今でもあの老人のことばを思いだしながら、地下鉄の車両のいちばん前に立って後にたぐりよせられていく闇をじっと眺めていることがある。

 村上春樹さんが地下鉄について──と、いうより地下鉄が「後ろへたぐりよせていく闇」について、いつからどんな風に感じて、何処にどのように書き残してきたのか辿りたい気持ちになるときがある。私が小学校に通う為に乗っていた地下鉄でも、私も先頭車両から窓の外の闇を見つめていた。AUXの歌詞の通り。

 窓があるのに外は壁だらけ

 窓があるのに外は壁だらけ

Magic Music

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