薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

プレミアム乳製品

特選バター

 わたしの母は、甘いものが好きだ。わたしも甘いものは大好きだけれど、母も負けない。珈琲に沢山お砂糖を入れ、練乳をスプンで掬って思いっきり食べたいと夢を語り(森茉莉は実際にしているという文章を書いていたが母は実行には至っていないようだ)、世界で一番好きな食べ物はチョコレイトで、プレミアムカルピスというカルピスの販売開始と販売終了に翻弄されているのが我がママちゃんである。母娘ということを棚に上げて、可愛いひとだと思う。

 中でも最近ホットなニュースだったのはプレミアムカルピスの販売終了であった。

 沢山冷蔵庫に入っていた500mlほどのペットボトルのストックが尽きそうになったので、京都の我が母はコンヴィニエンスストアに入っては在庫が無いか探して嘆息し、そして電話口で「もう無いんよ……」とかなしい声を出す。わたしは実はそのカルピスを飲んだことはない。実家に帰った際は母は勿論飲んでも良いと云って(「美味しいから!」とおおいに薦めて)出してくれていたのだけれど、冷蔵庫の扉を開けて眺めていると珈琲などを選ぶので、わたしはプレミアムカルピスはついぞ飲まずだ。販売終了になって母が嘆き始めた頃、偶然わたしが近所のよく分からない超雑多で大きなお店にいったら箱で置いてあったので、箱買いして着払いで送ってあげた。母は喜んでくれて大事に大事に飲んでいたみたい。着払いというところは娘であるがゆえのケチです。

 そうした経緯により「カルピスの会社が作っているバター」というものがあると知ったとき、それはすぐ母に教えてあげたいと思い、きっと好きなのではないかと、そのweb頁のURLを母に送りました。即行動で父に買ってきて貰った母は、わたしの家の分も送ってきてくれました。母が好きだと思ったからであってねだったわけではないので(それは母も承知でしょうが)ちょっと申し訳ないと思いながらも、滅多に食べないトーストを焼いてのせて食べました。有塩バターなので少々しょっぱいですが風味が美味しい。そういえばわたし、レーズンバターが好きなのだよな、と思って、四角いバターの塊から少しペティナイフで切り取って食べてみました。美味しいな。

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 江國香織はエッセイでも(「泣く大人」だったかな)書いていたし、たぶん「ウエハースの椅子」という小説のなかでも書いていたが、レストランにいったら銀色の器に入ったバターをフォークで突き刺して幾つも食べていた、という下りがある。両親はそんな私を「食通」だと云った。我が家にコレステロールのことを気にするひとはいなかった。というふうにそのエピソードは書かれるのでとても素敵で羨ましく思うのだけれど、現実問題わたしはコレステロールも脂肪分もちょっと気にしてしまうので、「フォークに突き刺して、幾つも」という行為は自粛した。

泣く大人 (角川文庫)

泣く大人 (角川文庫)


ウエハースの椅子 (ハルキ文庫)

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