- 作者: 梶尾 真治,鶴田 謙二
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2012/04/03
- メディア: コミック
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本棚から出して、1頁捲ったらもう世界に全身が溺れてしまっていて、本棚の前で立ちっ放しで全部を読んだ。自分の家の部屋の、本棚の前での立ち読み。自宅で立ち読みって変なの、とは思うけれど、面白い本ってそういうことだって思う。絵の具のすじさえよく判るフルカラーの頁が多くて美しい、梶尾真治「エマノン」シリーズの漫画版。鶴田謙二の描くエマノンのコミック。長い髪にそばかすがあって、煙草を吸うエマノン。生成り色、アラン模様のセータを着ていて、「E.N」と書かれたナップサックだけで旅をするエマノン。60億年の記憶を憶えている、エマノン。
SF小説は自分は得意ではないのだと思っていた。でも、私はエマノンの世界を総て知りたい。まだ未読のものがある。何しろエマノンの物語は単純に云って60億年ある。
読み終わって嘆息して、それから気が付いて慌ててメモ帖に書いた。伏線は油断無く張られている。エマノンが何故か双子の兄を持って生まれてしまった'60年代、熊本で巡り会った双子の兄は荏口拓麻。TAKUMAと彫られたエマノンが使っているジッポ。次にエマノンが拓磨に巡り会う日にちを予告して終わる物語。何かを暗示している。拓麻が持っている能力も。……しかし疑い出すと果てしない。前半のカラー短篇でエマノンの友人として描かれているヒカリ。エマノンが過去を携えて生きているとしたら、ヒカリは未来を持っている? 私はまだまだエマノンの物語を知りたい。
エマノンが煙草を吸っている理由が描かれていた。単なる蓮っ葉な少女であるという設定の、見せ掛けでは、なかった。