薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

鶴田謙二 梶尾真治『續 さすらいエマノン』

 全巻の続編なのだという油断をしていた。物語が進むのだと思って頁を開くと、そこにはこの本の始まったときよりも前の時間が広がっていた。今まで気付いていなかったけれど、それは必要な前章だった。気持ちが粟立つ。エマノンシリーズの世界は、まだまだ確実に何処までも広く続いていて、語られていない部分がいつまでもある。そんな読書体験が、人生に幾つあるだろうか。創作の骨組みの太さとエマノンという少女に覚える果てしなく叙情的ないとしさ。眩む。

 ちなみに徳間文庫から「エマノン」シリーズ4冊が新装版発行である。必死で昨年、品薄だった徳間デュアル文庫版を4冊探したけれど、新しく出るのはやっぱり嬉しい。

 1冊目は既に発行された「おもいでエマノン」次は1月8日「さすらいエマノン」です。