薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

秋山真琴『裸の女の肖像』

 Kindle版もあるのですが、表紙の為にアダルト商品指定されていてここに載せることが出来ません。なんということでしょう。

 id:sinden 又は雲上回廊銀河系最強こと秋山真琴さんの小説です。200文字で書かれた女についての掌編(掌編で良いのでしょうか)が100本収録されていて非常に、正直なところこれは「そそられる」本でした。

 100本の掌編はまさに「めくるめく」イマジネーションの連打、創造の可能性を何枚も何枚も捲り続けることの興奮と幸福感。極めて大好きな本に出逢えました。大好きです。「裸の女」と題されながら、卑猥なときも無邪気なときもシュールレアリズムなときも少々ライトノヴェル風味なときも、伝奇のようなときもあり、非常に昂ります。個人的な欲を云えば100本と云われナンバリングされているところが、少々計算ドリルめいていて苦手かも知れません(そういうの苦手なのです)逆にそういうところも好きな読者もいると思います。 Kindle版のリンクだけ貼りましょう(アダルト商品カテゴリですが気にしないでいいのよ。とはいえ、18歳以下はクリックしてはいけない頁なのですが……)

 Kindle版 裸の女の肖像

 紙媒体書籍は540円、Kindleは400円です。Kindleは横書きですが1篇が200文字なので読み易いです。文学フリマで紙媒体書籍を買いましたが、帰宅して「あかん、良い本だ」と呟きiPhoneにインストールすべく速攻Kindle版も購入しました。単行本が好きだと手軽に持ち運べるように文庫も購入するのと同じことです。ちなみにネット上で見られる書影は帯が巻いてあるもので、この文字が書いてある部分を恐る恐る取らなければなりません。緊張させられます。


 以下引用(多過ぎるかも)

20

見渡す限りの草原に、裸の女が横たわっている。


34

女がひとり、砂漠を歩いている。幾重にも布を重ね、熱と砂と風から身を守りながら、一心に西へと旅している。その女から東に、十日ほどの距離を置いて、別の女が歩いている。(後略)


 37のイメージの伸びには本当にどきどきしました。うつくしい。

37

ほら、顔を近づけて、葉脈を見てごらん。シンプルだろう、これが葉としての機能を実現したデザインだ。そして想像の目で見てごらん。ここは女性の横顔、ここは手を差し伸ばして微笑む女性、(後略)


 100は云うまでもなく終の恍惚がありました。本当に好きな本です。


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