薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

吉本ばなな『白河夜舟』

20150529083427


 何度目かの再読。結局中学生のときに読んでいた時代の吉本ばななが好きだな私、と思った。そして、作家になりたかった中学2年生の私の書くもののセオリィには、この時期の吉本ばななが確実に混じっていて、吉本ばなながデヴューした『海燕』の新人賞を調べてみたり、海燕文学s新人賞がもう無くなったことを知ってしょんぼりしたりしていました。


 『白河夜船』は夜や眠りに旅するひとたちの3篇の小説集。特に2篇めの「夜と夜の旅人」が好きです。夜に居ることは、旅だということは真実だと思っているし、夜の果ては夜の果てであって、朝が来るという時間ではない、それは実感であり「夜と夜の旅人」は私のこの感覚に合致するところが好きです。夜中に居間で誰かと喋る親密さ。静かで哀しくて愛おしいあらすじで、鎮まった感動があって、そんなところが好きです。

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 夜の色は、穂村弘のこの短歌に見える。

 ハロー 夜。ハロー 静かな霜柱。ハロー カップヌードルの海老たち。

 ハロー、夜の旅人たち、静かにあなたと話したい。