薄荷塔ニッキ

飛び石を渉れない。

森博嗣『χの悲劇』

χの悲劇 (講談社ノベルス)

χの悲劇 (講談社ノベルス)

 とってものろのろ、行きつ戻りつ読んでいたのですが読了してしまいました。もう、私はこの世界から出たくないしこの頁から戻ってきたくないんですよ。でも読了してしまいました。

 お茶を飲んだら、もう冷めていた。これがリアルというもの。

 「リアル」という単語は、今現在、そしてこの先、何を定義してゆくのでしょうね。少なくとも私は、オンラインで出会ったひととオフラインで出会ったひととに差を付けた接し方をしないので、人間関係においては、「twitterじゃない=リアル遭遇」みたいな表現をするひとには違和感があります。本書においては、そういう感覚ではなくて、つまりVRではない場所ということですよね。お茶は冷める。ちなみに主人公はカフェラテが好きなようです。

 もう冒険は終わったのだろうか? まだ、自分にも残された可能性があるだろうか? 今まで、こんなふうに考えたことがあっただろうか……。

 「研究」ではなくて、「推理小説」ではなくて、「冒険」という語。そうだ、もう私たち読者は、この世界の「冒険」のタームに突入している。冒険は始まったばかりだと、未熟な私はやっと気付いたところです。

 発売日は5月の連休明けだった為、twitterのタイムラインに(連休明けの為未だ入荷しておらず)「無いの悲劇」「買えないの悲劇」というtweetが並びました。はぁ……。


「希望はありません。どこでもけっこうです。地面に直結する関係は持っていませんし、風景を眺める趣味もありません」